総説・解説等 - 大谷　壽一

薬と食の相互作用　薬と食事の相性　メルカプトプリン水和物と食事

澤田 康文, 堀 里子, 大谷 壽一

医薬ジャーナル （(株)医薬ジャーナル社）  44 （ 9 ） 163 - 167 2008年09月

ISSN  0287-4741

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急性リンパ性白血病小児患者において、食後に抗悪性腫瘍薬のメルカプトプリン水和物(6-MP)を投与した場合、絶食時に投与した場合と比較して、6-MPの血漿中濃度一時間曲線下面積(AUC)、最高血漿中濃度(Cmax)は低下し、Cmax到達時刻(Tmax)は延長するとの報告がある。これは、食事摂取による胃排出速度の遅延によるものと考えられているが、AUCの低下の理由については不明である。一方で、6-MPの体内動態には食事の影響は認められなかったとの報告もある。6-MP経口投与後の体内動態には個人差が大きく、食事摂取による影響については一定した見解は得られていない。本邦の医療用添付文書においては、食事摂取との関係での本剤の服用タイミングについては記載されていない。患者の服薬コンプライアンスが維持できる観点、消化器系副作用回避の観点から食後服用が推奨されるが、本剤投与時期と食事とのタイミングについては患者個々で総合的に判断して決定すべきであろう。(著者抄録)

薬と食の相互作用　薬と食事の相性　エピナスチンと食事

澤田 康文, 堀 里子, 大谷 壽一

医薬ジャーナル （(株)医薬ジャーナル社）  44 （ 8 ） 141 - 143 2008年08月

ISSN  0287-4741

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健康成人男子に、第二世代のH1受容体拮抗薬である抗アレルギー薬、エピナスチンを空腹時または食後に経口投与した時、血漿中濃度推移は、いずれの場合も投与後約3時間で最高血中濃度(Cmax)に達し、以後減衰した。食後投与時のCmaxは空腹時投与の約67%に低下し、血中濃度-時間曲線下面積(AUC)は約62%に減少した。エピナスチンの吸収速度が比較的速く、食事摂取によって吸収速度、Cmaxが低下していること(特に30分値と1時間値が他に比べて大きく低下している)から、エピナスチンの消化管吸収は胃排出律速である可能性がある。食事摂取によってAUCが低下した原因は不明である。気管支喘息およびアレルギー性鼻炎に対しては就寝前投与で、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症、痒疹、そう痒を伴う尋常性乾癬に対しては食後投与で有効性および安全性が確認されている。エピナスチンの体内動態は食事の影響を受けることを理解し、むやみに食事と服薬とのタイミングを変更することがないように、処方設計ならびに服薬指導を心がけたい。(著者抄録)

薬と食の相互作用　薬と食事の相性　スプラタストと食事

澤田 康文, 堀 里子, 大谷 壽一

医薬ジャーナル （(株)医薬ジャーナル社）  44 （ 7 ） 157 - 159 2008年07月

ISSN  0287-4741

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スプラタストは、抗アレルギー薬のなかでIgE(免疫グロブリンE)抗体・IL(インターロイキン)-4・IL-5産生抑制作用を持つTh2サイトカイン阻害薬である。スプラタストを食後30分に経口投与した後の血漿中スプラタストの濃度推移は、空腹時投与に比べて、最高血漿中濃度到達時間(Tmax)の遅延ならびに最高血漿中濃度(Cmax)、血中濃度-時間曲線下面積(AUC)の大きな低下が認められた。しかし、血中消失半減期(T1/2)は食事の影響を受けなかった。食後では、薬物の胃排出速度が遅くなる傾向があり、そのため血漿中濃度推移が時間的に遅れたものと考えられる。一方、スプラタストは、食事によりバイオアベイラビリティも低下している(AUCで見ると60%低下している)が、その理由は不明である。スプラタストの用法は、食後服用と規定されている。空腹時に投与すると、血液中濃度の増加から一過的な副作用が現れることも考えられる。そのため食後服用を遵守する必要があろう。(著者抄録)

薬と食の相互作用　薬と食事の相性　エパルレスタットと食事

澤田 康文, 堀 里子, 大谷 壽一

医薬ジャーナル （(株)医薬ジャーナル社）  44 （ 6 ） 1597 - 1600 2008年06月

ISSN  0287-4741

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アルドース還元酵素阻害薬の糖尿病治療薬であるエパルレスタットを朝食後30分に経口投与すると、朝食前30分投与に比べ、最高血漿中濃度到達時間(Tmax)の遅延と最高血漿中濃度(Cmax)の低下が認められる。これは、本剤の小腸からの吸収が比較的速く、胃排出律速であり、食事摂取による影響を強く受けたためと考えられる。本剤は、食前投与した場合には食後30分から1時間後には既に有効血中濃度に達しており、血糖値が上昇してくる時(例えば食後30分から1時間にピークがあるとする)に有効血中濃度以上を維持することができる。これに対して、食後投与では有効血中濃度に達するのは食後約1時間であり、本剤が有効血中濃度に達する前に血糖値が上昇してしまい、本剤の血中濃度推移と血糖値の推移に時間的ずれが生じるものと推測される。以上より、用法として、通常、本剤は毎食前に経口投与するように設定されている。(著者抄録)

薬と食の相互作用　薬と食事の相性　エルロチニブと食事

澤田 康文, 堀 里子, 大谷 壽一

医薬ジャーナル （(株)医薬ジャーナル社）  44 （ 5 ） 136 - 139 2008年05月

ISSN  0287-4741

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高脂肪、高カロリーの食後に抗癌剤であるエルロチニブを投与した場合、最高血漿中濃度(Cmax)、血中濃度-時間曲線下面積(AUC)が増加するとの報告がある。単回投与試験では、食事摂取による最高血中濃度到達時間(Tmax)の変化が見られないことから、本剤の吸収は胃排出速度の影響をあまり受けないと考えられる。一方で高脂肪、高カロリー食によりAUCが増加することから、食事中の成分によってエルロチニブ代謝が阻害され、初回通過効果が低下した可能性や、胆汁分泌の増加によって可溶化が促進された結果、リンパ系などを介した吸収が促進した可能性も考えられるが、現時点ではメカニズムは不明である。エルロチニブは、国内外とも投与量を決定した臨床試験および有効性を確認した臨床試験は、いずれも空腹時投与で実施されていることと、食事の影響を受けることから、投与時期は食事の1時間前から食後2時間までの空腹時と設定されている。(著者抄録)

薬と食の相互作用　薬と食事の相性　ピオグリタゾンと食事

澤田 康文, 堀 里子, 大谷 壽一

医薬ジャーナル （(株)医薬ジャーナル社）  44 （ 4 ） 1169 - 1172 2008年04月

ISSN  0287-4741

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チアゾリジン誘導体の糖尿病治療薬であるピオグリタゾンは、固有な消化管からの吸収速度、吸収率は食事によりほとんど影響を受けないが、最高血中濃度到達時間(Tmax)は遅延する。絶食時におけるピオグリダゾンのTmaxは2時間程度であり、吸収速度は比較的速いことから、食事摂取時には胃排出時間遅延の影響を大きく受ける、いわゆる胃排出律速薬剤に分類されるものと考えられる。ピオグリタゾンは、1日1回朝食前または朝食後に経口投与することとされている。ピオグリタゾンは、スルホニルウレア剤(食前または食後服用)、α-グルコシダーゼ阻害剤(食直前服用)からの切り替え、あるいはこれらとの併用で使用されることから、服薬コンプライアンスの維持のためにも、ピオグリタゾンの投与時期はそれらの薬剤に合わせて、食前、食後服用を患者個々に選択することが必要であろう(例えば、スルホニルウレア剤を食前服用なら、コンプライアンスを維持するために切り替え後のピオグリタゾンも食前服用にするなど)。(著者抄録)

医薬品・食品などの併用による脂溶性ビタミン摂取評価ASPシステムの構築とその運用

江頭 あゆ子, 大谷 壽一, 堀 里子, 三木 晶子, 澤田 康文

日本栄養・食糧学会大会講演要旨集 （(公社)日本栄養・食糧学会）  62回   213 - 213 2008年04月

薬と食の相互作用　薬と食事の相性　アモキシシリン水和物・クラブラン酸カリウム配合剤と食事

澤田 康文, 堀 里子, 大谷 壽一

医薬ジャーナル （(株)医薬ジャーナル社）  44 （ 3 ） 180 - 183 2008年03月

ISSN  0287-4741

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β-ラクタマーゼ阻害薬配合剤の抗菌薬であるアモキシシリン水和物(AMPC)・クラブラン酸カリウム(CVA)配合製剤服用時のAMPCの体内動態は、一般的には食事摂取によってほとんど影響を受けない。一方CVAは、標準朝食摂取時には空腹時とほぼ同等の体内動態を示すのに対して、高脂肪食摂取時には、その相対バイオアベイラビリティ(AUC[血中濃度-時間曲線下面積]比)は顕著に減少し、Tmax(最高血中濃度到達時間)が遅延、Cmax(最高血中濃度)も低下する。これは、高脂肪食摂取によって胃排出が遅延するためと考えられるが、AUCが低下する原因は不明である。一方で、高脂肪食摂取開始時(食直前)に投与すると、被験者間変動も小さく、良好な吸収を示した。従って、CVA/AMPC配合製剤は、食事の直前に服用することが望ましいと考えられている。(著者抄録)

薬物動態・動力学の活用によるテーラーメード処方設計支援システムの基盤技術の確立に関する研究

大谷 壽一

医療薬学 （(一社)日本医療薬学会）  34 （ 3 ） 223 - 234 2008年03月

ISSN  1346-342X

後発医薬品への変更に伴う諸問題に関する処方医へのアンケート調査

三木 晶子, 宇野 幹子, 堀 里子, 佐藤 宏樹, 大谷 壽一, 澤田 康文

日本薬学会年会要旨集 （(公社)日本薬学会）  128年会 （ 4 ） 111 - 111 2008年03月

ISSN  0918-9823

ヒト胎盤灌流法を用いたパロキセチン胎盤透過性の解析

永井 麻理枝, 佐藤 宏樹, 堀 里子, 大谷 壽一, 藤井 知行, 武谷 雄二, 澤田 康文

日本薬学会年会要旨集 （(公社)日本薬学会）  128年会 （ 4 ） 95 - 95 2008年03月

ISSN  0918-9823

薬と食の相互作用　薬と食事の相性　エベロリムスと食事

澤田 康文, 堀 里子, 大谷 壽一

医薬ジャーナル （(株)医薬ジャーナル社）  44 （ 2 ） 743 - 745 2008年02月

ISSN  0287-4741

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免疫抑制剤であるエベロリムスは、高脂肪食摂取時に服用すると、最高血中濃度(Cmax)が低下し、Cmax到達時間(Tmax)が延長するとともに、血中濃度-時間曲線下面積(AUC)も低下する。Cmaxの低下およびTmaxの延長は、食事による胃排出時間の遅延に起因していると思われる。また、AUC低下の原因としては食事成分による吸収阻害が考えられる。しかし、現時点ではこれらを裏付けるエビデンスはなく、詳細は不明である。いずれにしても、エベロリムスは食事の影響を受けることから、血中濃度が不安定にならないように、食後または空腹時のいずれかの一定の条件下で投与し、血中トラフ濃度を測定し、投与量を調節する必要がある。(著者抄録)

薬と食の相互作用　薬と食事の相性　プロパフェノンと食事

澤田 康文, 堀 里子, 大谷 壽一

医薬ジャーナル （(株)医薬ジャーナル社）  44 （ 1 ） 161 - 164 2008年01月

ISSN  0287-4741

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抗不整脈薬であるプロパフェノンを食後に経口投与した場合、絶食時投与と比較して最高血漿中濃度到達時間(Tmax)は短縮し、最高血漿中濃度(Cmax)は有意に上昇する。さらに、プロパフェノンのrapid metabolizerにおいては、slow metabolizerよりも食事摂取の影響が大きかった。その一因として、rapid metabolizerの場合、食事摂取によって内臓・肝臓血流が一過的に増加することが考えられる。すなわち、血流増加に伴い消化管吸収が増加すると、初回通過時の肝臓への薬物流入速度が増大するために、肝初回通過代謝が飽和して、血中濃度が上昇するという機構である。しかし、slow metabolizerの場合には、主たるプロパフェノンの代謝酵素であるチトクロムP450(CYP)2D6が働いておらず、他の代謝酵素などへの親和性が低いことなどが原因となって、肝臓への薬物流入速度が増大しても代謝が飽和しないと推定される。しかし、この詳細な機構は今後解明される必要があるだろう。プロパフェノン服用患者においては、バイオアベイラビリティの変動を少なくして安定した薬物治療効果を得るために、食事摂取と服薬とのタイミングを常に一定に保つことが望ましい。例えば、食後服用が指示されている場合には常に食後に服用することを心掛け、空腹時服用は可能な限り避けるべきである。原則的には、服用時の嘔気、嘔吐を回避し、服薬ノンコンプライアンスを避けるために、食後服用とすべきだろう。特に、日本人においては、rapid metabolizerの割合が高く食事の影響を受ける可能性が高いと考えられるので、さらに注意が必要である。(著者抄録)

薬と食の相互作用　薬と食事の相性　スピロノラクトンと食事

澤田 康文, 堀 里子, 大谷 壽一

医薬ジャーナル （(株)医薬ジャーナル社）  43 （ 11 ） 2745 - 2748 2007年11月

ISSN  0287-4741

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カリウム保持性利尿薬であるスピロノラクトン(200mg)を朝食直後に単回服用した場合、絶食時に比較して、未変化体スピロノラクトンの最高血清中濃度到達時刻(Tmax)や消失半減期(T1/2)は変化しないものの、最高血清中濃度(Cmax)や血清中濃度-時間曲線下面積(AUC)は二倍程度に増加した。このAUCの増加率は、代謝物である7α-チオメチルスピロノラクトン、6β-OH-7α-チオメチルスピロノラクトン、カンレノンのAUCの増加率よりも大きかった。食事の影響の原因として、スピロノラクトンは脂溶性が高いために、食後は胆汁酸ミセルへの溶解によって見かけの消化管吸収速度が増加したためと考えられる。さらに、食事摂取により胃排出時間、腸内通過時間が遅延し、溶解の促進や、小腸吸収部位における滞留時間の延長によって吸収が改善した可能性も考えられる。また、食事摂取により、内臓や肝臓の血流が一過的に増大し、その結果としてスピロノラクトンのバイオアベイラビリティが増大した可能性も考えられる。実際の医療現場では、スピロノラクトンはほとんど食後に服用されていること、さらにスピロノラクトンを空腹時に服用すると、胃部不快感などの原因となることなどを考慮すると、スピロノラクトンは食後、食直後に服用することが望ましいと考えられる。(著者抄録)

薬と食の相互作用　薬と食事の相性　セレコキシブと食事

澤田 康文, 堀 里子, 大谷 壽一

医薬ジャーナル （(株)医薬ジャーナル社）  43 （ 10 ） 143 - 149 2007年10月

ISSN  0287-4741

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シクロオキシゲナーゼ-2選択的阻害薬であるセレコキシブは、食事(特に高脂肪食)摂取後に服用すると、血漿中濃度の上昇が観測される。セレコキシブは水溶性が低いことから、この濃度上昇は、食事成分(油成分など)によりセレコキシブの溶解が促進されたためと考えられる。また、一般的に、食事を摂取すると胃内容排出速度は遅延し、胃内における薬剤の滞留時間が長くなるので、セレコキシブのような難溶性で脂溶性の高い薬剤が分散し、溶解するために十分な時間が確保できる。また、食事摂取によって胆汁酸塩や胃液の分泌が亢進することも、難溶性薬剤の溶解速度を上昇させる一因かもしれない。セレコキシブは、医療用医薬品添付文書では、朝・夕の食後に経口投与するように記載されている。また、他の非ステロイド性消炎鎮痛薬と同様に、消化性潰瘍を悪化させるおそれがあるため消化性潰瘍のある患者には禁忌、消化性潰瘍を再発させるおそれがあるため消化性潰瘍の既往歴のある患者には慎重投与となっている。以上のことから、本剤を服用する場合には、十分な血液中濃度を得るとともに、少しでも消化器障害を回避するために、食後服用が適当と考えられる。(著者抄録)

別物調剤事例の要因解析とその評価

斉田 翌美, 井上 綾子, 金澤 彩子, 堤 麻理子, 石橋 久, 森 千江子, 勢島 充, 高木 淳一, 小野 信昭, 堀 里子, 三木 晶子, 大谷 壽一, 澤田 康文

日本薬剤師会学術大会講演要旨集 （(公社)日本薬剤師会）  40回   452 - 452 2007年10月

薬と食の相互作用　薬と食事の相性　リンコマイシン、クリンダマイシンと食事

澤田 康文, 堀 里子, 大谷 壽一

医薬ジャーナル （(株)医薬ジャーナル社）  43 （ 9 ） 170 - 174 2007年09月

ISSN  0287-4741

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今回はリンコマイシン系抗菌薬であるリンコマイシンとクリンダマイシンについて取り上げる。リンコマイシンを食直後あるいは食後30分に投与すると、空腹時に投与した場合と比べて血液中濃度は半分程度に低下する。しかし、食事1時間前に投与した場合は、その影響は小さい。リンコマイシンの消化管吸収は比較的遅く、胃排出とは考えにくい。従って、食事摂取により血液中濃度が低下した原因としては、小腸における何らかの特異的な吸収過程が食事成分によって影響を受けた可能性があるが、その機構に関しては不明である。一方、クリンダマイシンの最高血中濃度到達時間(Tmax)は食事摂取によって多少遅延するものの、血中濃度-時間曲線下面積(AUC)は影響を受けない。クリンダマイシンの消化管からの吸収は比較的速いことから、食事により胃排出速度が変化し、その影響を受けている可能性がある。リンコマイシン、クリンダマイシンの医療用添付文書の用法用量の項には、食事摂取と服用のタイミング(食後服用の指示など)については記載されていない。ただし、適用上の注意欄には、「水又は牛乳で服用させ、特に就寝直前の服用などには注意すること(食道に停留し、崩壊すると、まれに食道潰瘍を起こすことがある)」と記載されている。一方、リンコマイシンは食事との相互作用を生じない空腹時に投与すべきであるとの報告もある。しかし逆に、上記のような食道潰瘍の危険性もあることから、食後服用も考慮すべきであろう。また、クリンダマイシンの体内動態は、食事によりほとんど影響を受けないが、上記の食道潰瘍の問題を回避するために食後服用が勧められる。(著者抄録)

薬と食の相互作用　薬と食事の相性　メトホルミンと食事

澤田 康文, 堀 里子, 大谷 壽一

医薬ジャーナル （(株)医薬ジャーナル社）  43 （ 8 ） 2077 - 2082 2007年08月

ISSN  0287-4741

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糖尿病治療に用いられるビグアナイド薬であるメトホルミンは、消化管からの吸収が比較的早く、胃排出律速の可能性がある。従って、食事摂取により最高血中濃度(Cmax)は若干低下し、最高血中濃度到達時間(Tmax)は若干遅延する。一方、血中濃度-時間曲線下面積(AUC)も若干低下することから、メトホルミンの担体を介した吸収が食事成分により阻害される可能性もあるが、この点についての詳細は不明である。本邦の医療用添付文書では、メトホルミンは食後に服用するよう指定されている。一方米国では、胃腸症状の副作用軽減のために「食事中に服用する」とされている。以上のことから、メトホルミンは空腹時に服用しても体内動態には大きな変化は生じないが、胃腸症状などの回避の観点からも、食後に服用する必要があると考えられる。(著者抄録)

薬と食の相互作用　薬と食事の相性　ニューキノロン系抗菌剤と食事

澤田 康文, 佐田 宏子, 堀 里子, 大谷 壽一

医薬ジャーナル （(株)医薬ジャーナル社）  43 （ 7 ） 182 - 188 2007年07月

ISSN  0287-4741

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ニューキノロン系抗菌剤の体内動態に及ぼす食事の影響は、ほとんどの場合それほど大きなものではないが、最高血中濃度(Cmax)の低下と最高血中濃度到達時間(Tmax)の遅延が見られる。多くのニューキノロン系抗菌剤の消化管からの吸収速度は比較的速いと考えられることから、消化管からの吸収は胃排出律速の可能性が高い。すなわち、食事摂取によって胃排出時間が遅延することにより、ニューキノロン系抗菌剤の経口投与後のTmaxが遅延すると考えられる。いずれにしても、食事摂取の効果はそれほど大きなものではなく、食後服用と空腹時服用との間で治療効果に差が出てくるとは考えにくい。ただし、多くの場合、治療効果を検討するための臨床試験は食後服用で検討されたものであり、また胃障害の回避や服薬コンプライアンスの維持などの観点からは、食後服用がすすめられる。また、通常の食事摂取では、血中濃度-時間曲線下面積(AUC)の変化は大きなものではないが、カルシウムなどの金属カチオンが多く含まれる食事摂取の場合、相互作用が惹起する可能性があるので注意が必要であろう。(著者抄録)

薬と食の相互作用　薬と食事の相性　ビスホスホネート製剤と食事

澤田 康文, 堀 里子, 大谷 壽一

医薬ジャーナル （(株)医薬ジャーナル社）  43 （ 6 ） 1627 - 1632 2007年06月

ISSN  0287-4741

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骨粗鬆症治療薬であるビスホスホネート製剤のエチドロン酸二ナトリウム(ダイドロネル)、アレンドロン酸ナトリウム水和物(フォサマック、ボナロン)、リセドロン酸ナトリウム水和物(ベネット、アクトネル)は、食事とともに服用すると消化管吸収が低下して十分な治療効果が得られない可能性がある。特に、牛乳や乳製品のような高カルシウム食やカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄などの金属を含有するカルシウム補給剤、制酸剤、マグネシウム製剤鉄剤などではその影響が顕著である。またコーヒー、紅茶やオレンジジュースの飲用もこれら薬剤の吸収を低下させる可能性がある。エチドロン酸においては「服薬前後2時間は食物の摂取を避けること」、アレンドロン酸やリセドロン酸は「朝起床時の空腹時に水約180mLとともに経口投与し、服用後少なくとも30分間は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避けること」と指示されている。(著者抄録)