競争的研究費の研究課題 - 黒田 有希子
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2024年04月-2025年03月
科学研究費助成事業, 松尾 光一, 河合 克宏, 黒田 有希子, 基盤研究(B), 未設定
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動物の骨格の左右対称性は、歩行や走行、遊泳、飛行の基盤となる。「骨格パターン形成の段階」では、骨芽細胞の細胞キラリティ(互いに鏡像の左手型や右手型細胞のこと)と左右対称性形態形成の関係を解明する。次に「骨の変容成長の段階」では、皮質骨が周囲の臓器の変化に応じて吸収され、対面の皮質骨が形成される「内形成性トランスペアリング」が起きるメカニズムを解明し、鏡像的な骨周囲環境で骨格が左右対称になることを示す。
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内耳バリア機構をターゲットとした内耳薬物動態とドラッグデリバリーシステムの開発
2023年04月-2026年03月科学研究費助成事業, 神崎 晶, 黒田 有希子, 基盤研究(C), 未設定
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内耳性難聴の治療薬開発において、薬物の内耳に到達量、「薬物が内耳窓膜や血液迷路関門といったバリアを十分通過しているか」は重要な課題である。内耳への薬物投与経路には内耳膜を経由した局所投与、血液迷路関門(血管条)を経由した全身投与、と前述の2つの併用投与がある。我々は、同時併用投与では各単一経路の投与の総和以上に薬物が内耳に到達する“相乗効果”がみられることを示したが、そのメカニズムは不明である。
具体的には以下3点を解明する。
①全身投与と局所投与の併用による相乗効果の検証
②内耳障害における内耳窓膜・内耳血管条の変化と薬物動態の解析
③内耳バリア機構をターゲットとしたドラッグデリバリーシステムの構築 -
感覚器における骨組織の役割~聴覚器に特化した骨形態・骨代謝制御機構の解明
2022年04月-2025年03月文部科学省・日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 黒田 有希子, 基盤研究(C), 補助金, 研究代表者
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本研究では、聴覚に関連する骨の解析を通して「感覚器としての骨」という新たな骨機能の理解を目指す。また、感覚器に着目することで未知の骨形態・骨代謝制御機構の発見と解明を目指す。実際、申請者は中耳に存在する耳小骨が独自の骨代謝制御をとることで伝音機能に有利な骨基質を有していることを報告した。このことから、感覚器を構成する骨を研究対象とすることで新たな骨形態・骨代謝制御機構の発見につながる可能性は十分あると考えられる。
これまでの骨研究分野では、骨が如何にして身体を支え、動かすかという骨の運動器としての機能や代謝を中心に解析が行われてきた。その一方で、申請者は中耳に存在する耳小骨の研究を通し、聴覚に関連する骨が独自の形態形成や代謝制御をとることで感覚器の機能を最大限に引き出していることに気付いた。そこで本研究では、聴覚に関連する骨と一般的な長管骨を比較解析し、「感覚器に関連する骨がその機能に特化した形態や性質を獲得している」という仮説を証明することを目指す。
一般的な長管骨と同様に、聴覚関連骨も軟骨原基が石灰化骨に置き換わる内軟骨性骨化により骨形成が進行する。しかし、聴覚関連骨と長管骨では骨を形成する骨芽細胞のサブタイプが異なり、その結果、骨密度や骨基質成分の異なる骨であることが判明した。
初年度は、聴覚関連骨を形成している「聴覚骨芽細胞」と一般的な骨芽細胞の具体的な差異を明らかにするために、聴覚関連骨および大腿骨から同一の骨芽細胞マーカーを指標として骨芽細胞を分取し、各骨芽細胞のRNAシークエンスを行い、遺伝子発現パターンを比較解析することに取り組んだ。骨芽細胞の純度を高めるために、骨芽細胞が蛍光たんぱく質でラベルされたトランスジェニックマウスを用いたが、マウス耳小骨はわずか数ミリ程度の小さな骨であるために、その小さな骨から骨芽細胞の採集方法を確立するまでに時間がかかった。また、聴覚に特化した「振動を伝える」という機能が聴覚関連骨の形成や維持、および骨密度に及ぼす影響を調べるために、マイクロCTよりも解像度の高いナノCTを用いて立体構造や骨密度を正確に観察する方法を確立した。
申請者はマウス聴覚関連骨の中で、聴覚骨芽細胞のみによって骨が形成されているのは耳小骨(中耳)と骨迷路(内耳)であり、一部の聴覚関連骨には一般的な骨芽細胞も混在していることを発見した。そのため、聴覚骨芽細胞を単離するサンプルには耳小骨と骨迷路のみを用いた。また、骨芽細胞マーカーのうち、オステオカルシンは聴覚骨芽細胞でも一般的な骨芽細胞でも発現していることを確認した。そこで、純度の高い骨芽細胞を採集するために、オステオカルシンプロモーターの下流で緑色蛍光タンパク質(topaz)を発現するトランスジェニックマウス(BGLAP-tpz)を使用し、蛍光強度を指標に、骨芽細胞を分離することを計画した。聴覚骨芽細胞を集めるためには耳小骨と骨迷路を、一般的な骨芽細胞を集めるためには長管骨である大腿骨と脛骨をコラゲナーゼで処理し、topazの蛍光強度を指標としてセルソーティングを行った。その結果、いずれのサンプルにおいてもtopaz強陽性と弱陽性の2種類の細胞群があった。長管骨の骨芽細胞を用いたRNAシークエンスの結果から、topaz強陽性が骨形成能をもつ骨芽細胞であることが分かった。以上の結果から、長管骨由来、および耳小骨と骨迷路由来の骨芽細胞の遺伝子発現パターンを比較する際には、topaz強陽性の細胞を用いることとした。耳小骨と骨迷路から回収できた骨芽細胞数は大腿骨に比べて極めて少なかったため、RNAシークエンスに必要なRNA量を回収するまでに時間がかかったが、本年度内に聴覚骨芽細胞由来のRNAも解析することができた。
また、耳小骨など小さな骨はマイクロCTの解像度では、正確な骨密度計測ができなかったが、ナノCTを用いて撮影条件や検量線の設定、CT再構築時の条件設定などを検討することで、正確な骨密度の定量が可能となった。
RNAシークエンスの結果を用いて、聴覚骨芽細胞と一般的な骨芽細胞における発現遺伝子の比較解析を行う。聴覚骨芽細胞が形成する骨は一般的な骨芽細胞が形成する骨と何が違うのか、を明らかにするために1)聴覚骨芽細胞に特異的に発現している遺伝子の探索、2)石灰化度や細胞外マトリクス、細胞接着に着目したパスウェイ解析、を行う。遺伝子発現解析の結果、聴覚骨芽細胞に特異的な発現が見られた遺伝子や高骨密度制御の遺伝子に関しては、切片による免疫染色でタンパク質の発現パターンを確認する。RNAシークエンスは再現実験を行う必要があるため、BGLAP-tpzマウスの繁殖と飼育は継続する。
聴覚関連骨は形態そのものが「振動を伝える」という機能に特化していると考えられる。その形態の制御機構を理解するためには、切片などの平面で組織学的解析を行うだけでは不十分であり、骨形成に関わる細胞群や血管、神経などを三次元的に捉える必要がある。そのため、ホールマウント免疫染色や透明化を行い、骨形態形成の制御に関わる細胞群の三次元解析を行うことを目指す。また、聴覚異常と骨との関係を明らかにするために、難聴モデルマウスの解析も計画している。これらの解析のために、中耳・内耳の骨密度や骨形態に関する情報を取得するナノCT撮影後に同じサンプルをホールマウント解析するプロトコールの確立を目指す。 -
2021年04月-2025年03月
科学研究費助成事業, 松尾 光一, 河合 克宏, 神崎 晶, 黒田 有希子, 基盤研究(B), 未設定
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骨格の形状は高度な左右対称形を示す。しかし、骨が左右対称性に形作られる形態形成の細胞機構は何かという学術的問いには答がない。本研究では、左右対称性の骨格形成のメカニズムを解明する。すなわち、①左右で鏡像の、軟骨細胞や骨芽細胞が存在するという細胞キラリティ仮説と、②皮質骨を挟んだ破骨細胞と骨芽細胞の対合メカニズム(トランスカップリング)が存在して骨周囲の臓器組織に応じて骨も左右対称性に変容し成長するというトランスカップリング仮説を検証する。
筋骨格系は、高度に左右対称である。「骨が左右対称性に形作られる形態形成の細胞機構」を解明するために、二つの現象に着目して研究を進めた。一つ目は、胎児期に左右対称性の軟骨原基を骨に置換したり、膜性骨化で直接骨化していく「骨格形成の段階」であり、二つ目は生後に骨化した骨が筋肉などの骨周囲の臓器・組織の成長と同調して一体となって成長しながらその形を改変していく「骨の変容成長の段階」である。すなわち、左右対称性の骨格パターン形成を説明する「細胞キラリティ仮説」と、パターン形成後の骨の左右対称性の変容成長を説明する「トランスペアリング仮説」の検証を目的とした。
【細胞キラリティ仮説】“骨芽細胞には、鏡像の左手型細胞と右手型細胞が存在して、左右対称の骨格を形成する”という「細胞キラリティ仮説」に基づき、培養系で細胞キラリティを計測した。生体内において、正中面を境に細胞レベルで鏡像であれば、左右対称な骨格系の形態形成を容易に説明できる。これまでマウスの初代骨芽細胞を用いて得られたデータからは、骨芽細胞はホモキラル的であり、細胞より大きなスケールで左右対称構造の構築が行われていることが示唆された。
【トランスペアリング仮説】“皮質骨を挟んだ破骨細胞と骨芽細胞の対合メカニズム(トランスペアリング)が存在して、成長過程で左右対称性の周囲組織の形態に応答し、骨が左右対称性に変容しながら成長する”という「トランスペアリング仮説」に基づき、どのように破骨細胞と骨芽細胞が皮質骨の裏表という遠隔でありながらコミュニケーションができているのかというメカニズムを解析した。皮質骨を貫通する管腔構造が、内向きのトランスペアリングで皮質骨内外のコミュニケーションを担っていることを示すデータが得られた。
【細胞キラリティ仮説】これまでのマウス頭蓋骨由来の初代骨芽細胞を用いた解析によると、左右どちらの頭蓋骨から調製した骨芽細胞も、同じ型の細胞キラリティ、つまりホモキラリティを示していた。そこで、骨芽細胞の偏った細胞キラリティが、頭蓋骨や長管骨の微細形態に反映しているという作業仮説を検証するために、6週齢を中心に、マウス前頭骨を高解像度X線CTで経時的に解析した。生後の前頭骨の大部分は皮質骨が1層であり、左右の前頭骨それぞれで、周辺部分から中心に向けて放射状の骨梁が徐々に形成されて2層構造になっていくことが観察された。この放射状骨梁は概ね左右対称であるものの、その対称性は不完全であり、骨芽細胞の偏ったキラリティを反映している可能性が見いだされた。レーザー共焦点顕微鏡を用いた骨芽細胞や破骨細胞、血管のイメージングにより、放射状骨梁の周囲に特徴的な骨芽細胞や破骨細胞の配置が観察された。また別に、成長過程のマウスについて右腓骨の高解像度X線CTイメージング像を得た。骨小腔を楕円体近似して、各骨小腔の長軸方向と、骨表面骨髄の長軸方向との関係を定量的に評価したところ、皮質骨の特異部分を除き、骨髄側から見て同一方向に傾いている骨小腔が、逆方向に傾いているものよりも有意に多かった。つまり、腓骨の皮質骨にある骨小腔の集団は螺旋様に配置していた。螺旋様構造はキラリティをもつので、左右の長管骨が鏡像か、ホモキラルであるかを判定できる。頭蓋骨と長管骨での形態学的解析基盤を確立できたので、細胞キラリティの偏りと骨形態との関係が明らかにできる見通しが立った。
【トランスペアリング仮説】坐骨神経切除術後のマウス長管骨を用いたX線顕微鏡による解析などにより、皮質骨を貫通する管腔構造が、内向きのトランスペアリングで皮質骨内外のコミュニケーションを担っているというデータが得られたので、論文化の見通しが立った。
2023年度は、下記の二つの仮説の検証について論文化に必要十分なデータの収集を目指す。
【細胞キラリティ仮説】新生仔マウスの頭蓋冠や、離乳後の大腿骨・脛骨、耳小骨や蝸牛から初代骨芽細胞を単離する。次に、細胞培養レベルで右手型や左手型というキラリティを検出する手法(Wan et al, 2011, PNAS; Tee et al, 2003, Nat Commun)をさらに改良し、フィブロネクチンを縦600x横300ミクロンの長方形状にガラス面に塗布する。その上で骨芽細胞を培養し、フィブロネクチンでコートされた長方形部分に骨芽細胞が接着して整列するのを待ち、明視野で撮像し、細胞集団として右方向に傾いて配列するもの(右手型と呼ぶ)と左方向に傾くものを定量的に解析する。さらにアクチン線維を蛍光染色して方向を定量する。生体内においても、細胞キラリティを反映する構造の検出を目指す。
【トランスペアリング仮説】マウス腓骨の皮質骨において、骨外膜の骨芽細胞と骨内膜の破骨細胞が皮質骨を挟んで対になっている「外向きのトランスペアリング」と、骨外膜の破骨細胞と骨内膜の骨芽細胞が対になっている「内向きのトランスペアリング」とを区別し、骨の外からの圧迫に応答して骨を変形させる内向きのトランスペアリングのメカニズムを解析する。具体的には、高解像度ナノCT(nano3DX, リガク)やライトシート顕微鏡(Zeiss LSM980)、共焦点顕微鏡(Evident FV3000, Nikon C2)などを用いて、皮質骨を高解像度に撮像し、皮質骨を貫通する血管腔の可視化や、その直径や密度などの定量を行う。坐骨神経切除術を行うと、内向きトランスペアリングが腓骨の骨幹部の全周に広がる。その状態で皮質骨貫通血管も全周性に広がるかどうかを検討する。 -
高い骨密度の骨を形成する新規骨芽細胞群「超石灰化骨芽細胞」の解析
2019年04月-2022年03月慶應義塾大学, 科学研究費助成事業 基盤研究(C), 黒田 有希子, 基盤研究(C), 未設定
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申請者はマイクロCTを用いて成獣マウス全身骨格の骨密度測定を行ったところ、骨の種類によって、また骨の部位によって骨密度が大きく異なることを見出した。骨に含まれるタンパク質の9割以上はⅠ型コラーゲン線維であることから、骨芽細胞が分泌するコラーゲンはⅠ型であると考えられている。ところが、骨密度が際立って高い耳小骨、上腕骨遠位部、および脛骨遠位部を解析したところ、意外なことに、Ⅰ型コラーゲン(Col1a1)の発現が低い骨芽細胞が骨基質を産生していた。本研究では、この新たな骨芽細胞を「超石灰化骨芽細胞」と名付け、骨密度の高い骨を形成する分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。
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2017年04月-2021年03月
慶應義塾大学, 科学研究費助成事業 基盤研究(B), 松尾 光一、黒田 有希子, 基盤研究(B), 未設定
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1. 内軟骨性骨化によって骨になる耳小骨や長管骨の解析から、内軟骨性骨化過程で働く新たな「内軟骨性骨芽細胞」の実体を明らかにしようと実験を進めた。その結果、耳小骨で見出された「内軟骨性骨芽細胞」と類似した細胞が、(成長板直下の軟骨・骨移行部ではなく)上腕骨遠位部の骨膜下などの、骨密度が特別に高い部分に存在することがわかった。意義:研究対象の細胞を、予測される機能に基づき「超石灰化骨芽細胞(hypermineralizing osteoblasts)」と呼ぶこととし、実体の解明が進んだ。
2.I型コラーゲンの発現細胞を可視化できるCol1a1-GFPマウスを用いた解析から、耳小骨の「超石灰化骨芽細胞」はI型コラーゲンの発現が低く、II型コラーゲンの発現が高いことが分かった。骨芽細胞マーカーであるオステオカルシンに陽性、Col1a1-GFPマウスでGFP陰性、かつ骨標識剤アリザリンでラベルされる骨形成部位に局在するという指標を用いて同定できることがわかった。意義:本来骨基質のタンパク質の9割程度を占めるI型コラーゲンだけでなく、軟骨に含まれるII型コラーゲンも産生する骨芽細胞が存在することが初めて明らかになった。
3.放射光施設SPring-8におけるX線位相顕微鏡を用いたマイクロCT解析により、腓骨における通常の骨芽細胞と、耳小骨における「超石灰化骨芽細胞」の両方を、細胞レベルで可視化できた。意義:内軟骨性骨化の過程を細胞レベルで空間的に把握することができるようになった。骨芽細胞と毛細血管の空間的な位置関係の情報が得られた。
4.耳小骨以外のマウスの骨格全体で、「超石灰化骨芽細胞」の主な存在部位が明らかになった。
「長管骨の成長板直下の軟骨・骨移行部では、通常の骨芽細胞とは異なる「内軟骨性骨芽細胞」が、骨形成性毛細血管を構成して、軟骨基質上に骨基質を添加する」という当初の作業仮説を追究した結果、耳小骨で内軟骨性骨化を担う骨芽細胞に似た骨芽細胞が、マウス骨格の成長板以外の部位に見出された。これは予期しない知見であったものの、新たに見出された「超石灰化骨芽細胞」が耳小骨の骨化に限られた特殊なものではなく、石灰化度の高い様々な部位に存在する普遍的な骨芽細胞である可能性が示され、「超石灰化骨芽細胞」が通常の骨芽細胞とは異なることが明確になってきたから。
推進方策1.超石灰化骨芽細胞と骨密度の高い骨(の部分)との関係を明らかにする。Col1(Low)Col2(High)骨芽細胞を、超石灰化骨芽細胞(Hypermineralizing osteoblasts)として一般化できるかどうかを検討する。
2.超石灰化骨芽細胞の分化条件を検討する。骨軟骨前駆細胞株を用いて、細胞外マトリックスの組成や成長因子の添加などを変えて、試験管内で超石灰化骨芽細胞が出現する条件を解明する。
3.超石灰化骨芽細胞と骨形成性毛細血管の関係の解析。耳小骨では、毛細血管周囲に骨芽細胞が配列していたが、耳小骨以外の部位での超石灰化骨芽細胞が毛細血管に直接的に接触しているかどうかは知られていない。免疫組織化学などを駆使して、血管内皮細胞と超石灰化骨芽細胞との関係を解明する。 -
骨吸収窩糖タンパク質が誘導する新規骨形成制御機構の解明
2016年04月-2019年03月文部科学省・日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 黒田 有希子, 基盤研究(C), 補助金, 研究代表者
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2013年04月-2016年03月
慶應義塾大学, 科学研究費助成事業 基盤研究(C), 黒田 有希子, 基盤研究(C), 未設定
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骨リモデリングの際に新たな骨形成が促される場である骨吸収窩には糖タンパク質が豊富に存在することが知られているが、その生理的役割はあまりよく分かっていない。本研究では、骨吸収窩に存在する糖タンパク質が破骨細胞から分泌されたものであること、レクチンアレイを用いて見出した「新規骨吸収窩認識レクチン」が生体内の破骨細胞と血管を特異的に認識すること、新規骨吸収窩認識レクチンに結合する糖タンパク質のうち、最も主要なタンパク質はマトリックスプロテアーゼであることを明らかにした。さらに、培養細胞を用いた実験系により、骨吸収窩が骨芽細胞の動きに影響を及ぼす可能性が示唆された。
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カルシウムオシレーション非依存的破骨細胞分化を担う分子群の探索と同定
2011年-2012年慶應義塾大学, 科学研究費助成事業 若手研究(B), 黒田 有希子, 若手研究(B), 未設定
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本研究期間内では、骨芽細胞と破骨細胞が直接接触することによりカルシウムオシレーション非依存的な破骨細胞分化シグナルが活性化すること、この分化シグナルを誘導する分子は骨芽細胞の膜画分に存在することが明らかとなった。また、骨芽細胞との接触により破骨細胞内のCotkinase(リン酸化酵素)が活性化され、破骨細胞分化のマスター分子であるNFATc1をカルシウム非依存的に活性化する分子機構を明らかにした。これらの結果は、新たなNFATc1活性化機構を通した破骨細胞分化制御機構を発見した、という点で非常に興味深い知見といえる。
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新規破骨細胞分化メカニズムーカルシウムオシレーション非依存的メカニズムーの解明
2009年-2010年独立行政法人理化学研究所, 科学研究費助成事業 若手研究(B), 黒田 有希子, 若手研究(B), 未設定
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IRBITノックアウトマウス由来の細胞を用いた解析により、IRBITをノックアウトすると多核の破骨細胞形成が亢進することが分かった。IRBITノックアウト細胞では、破骨細胞分化誘導時に観察されるカルシウムオシレーションを呈する細胞の割合が増えていること、細胞融合のステップが亢進していることから、IP_3Eを介したカルシウムシグナルが細胞融合を亢進する働きを担っていること、そのカルシウムシグナルはIRBITによって負に制御されていることが明らかとなった。
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2007年-2008年
独立行政法人理化学研究所, 科学研究費助成事業 若手研究(スタートアップ), 黒田 有希子, 若手研究(スタートアップ), 未設定
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申請者はIP3R結合タンパク質の一つであるIRBITをノックダウンすると破骨細胞分化因子RANKLによって誘導されるカルシウムオシレーションの始まるタイミングが早まる傾向があることを見いだした。この結果より、IRBITが破骨細胞分化誘導時のカルシウム動態に深く関わっている分子であることが明らかとなった。そこで、破骨細胞分化時、および未分化時にそれぞれ特異的にIRBITに結合するタンパク質のスクリーニングを行い、現在はその中の候補タンパク質の一つであるE3ユビキチンリガーゼに注目し、研究を進めている。